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本は確実に人生を豊かにする!読書が好きな著者が、日々読んだ本を紹介していきます。この中に、あなたの人生を変える一冊があるかも...?

『コンビニ人間』~感想~私も〇〇人間になりたい!

私も〇〇人間になりたい!

コンビニ人間村田沙耶香

前回の続き、『コンビニ人間』の感想です!

 

【感想】~ネタバレありです~

“この人、アスペルガー症候群っぽいな” 読み始めて直ぐ、主人公の思考回路や行動を見て思ったのですが、最後まで読んでみてやっぱりそうなんだろうなぁと思いました。幼い頃に気づいて貰えていたら、また少し違った人生になっていたのかな、とも思いました。

 

主人公である、“古倉 恵子”は、この小説で言うところの“普通の人間”ではありません。小学生の頃は、男の子達の喧嘩を止めるためにスコップで殴って気絶させたり、ヒステリーを起こした先生を静かにさせるために、スカートをパンツごとおろして泣かせてしまったり。恵子は、それらの行動を咎められても、何故咎められるのか理解することが出来ません。本人的には、ただ、最も合理的な手段を用いただけなのです。

 

いつでも、誰にでも、家族にすら“異質”であると思われ、この世界に馴染むことが出来なかった彼女ですが、大学のときに始めたコンビニのアルバイトで、初めて自分の居場所を見つけます。そこでは普段、“大学生”であったり、“主婦”であったりと、どのような肩書があろうと、皆等しく“店員”であり、それ以上でもそれ以下でも無かったのです。時間帯ごとにやることは決まっているし、皆が一つの目標(新商品を宣伝する、特売のファーストフードを大量に作って売り上げる、など)に向かって等しく行動している。自分の身なりも、生活リズムも、全てコンビニのためだと思えば、彼女は迷いなく行動する事が出来て、活き活きと生活することが出来ましたコンビニで働いていれば、自分は世界とわずかでもつながることが出来て、コンビニという何かの塊を形成するものの一部、“部品”になることが出来たのです。多分、自分の存在価値を初めて見い出すことが出来たのでしょう。

 

そうして18年が過ぎ、彼女は37歳になっても、コンビニでアルバイトを続けて居ました。同僚の喋り方やファッションを真似て、“普通の30代女性”で居ることに努めていた恵子ですが、“普通の人間”は異質なものを本能で見分けることが出来るんですよね。いい歳をして、結婚していないアルバイト生活の彼女は、上手くやっているようで、実は“異端者”であると認識されていたのでした。

 

“この世界で異質なものは排除される”とか、“世界の仕組みは縄文時代と変わらない。狩りの出来る強い男が、村一番の美女を娶る。子供を産めない女や、ろくに狩りも出来ない男おはムラからはじき出される。” という、この小説に出てくる思想は本当にその通りだなと思います。私達は、自由な生き方を選択しているようで、いつも“普通”に縛られていますよね

 

“世の中での普通という概念に、私達は常に縛られている”

 

子供の頃は、皆が同じに見えますよね。(実際は、親の収入などの家庭環境も関係するので、皆が同じというのは少し違いますが)子供の頃に、激しく人を羨んだり、妬んだり、ということはそうそう無いかと思います。でも、大人になれば、社会的地位や生活水準の差というのは顕著に表れます。他人と自分を比べて、自分より上に見える人をリアルな感情で羨んだり(もしくは妬んだり)、自分より下に居る人を見てホッとしたりするようになります。

 

“普通”って凄く曖昧な概念なので、結局他人と自分を比べてマウンティングしてしまうんです。マウンティングすることでしか、自分が普通なのか、普通では無いのか判定することが出来ないんです。だってそうでしょ?一般家庭はこんなんです!普通の人間っていうのはこんな性格です!っていうはっきりとした指標は何処にも無いんだから。恵子も、“普通”が分からず、一般的な人とはちょっと違う意味で“普通”に縛られ、振り回されて居ますよね。

 

最終的に彼女は、普通で居たいからコンビニで働くのではなく、もう“本能的にコンビニが好きなのだ”と気づかされて、一生コンビニで働いていこうと決意をします。私には、自分の望む生き方を本能で選択したように見えました。彼女は“普通”に縛られず、ありままで生きることを選んだのだと思いました。

 

コンビニ人間』は、アスペルガー症候群の人の人生の話ではありません私達一人一人が共鳴出来る話なんです。私達は一人一人、普通じゃないし、それが普通なのだから。主人公、恵子がコンビニで一生働いていくことを決めたこと、自分を“コンビニ人間”である、と堂々と言えることは恥ずかしいことでしょうか?私には、どうも格好良く見え、羨ましく思えました。固定観念を取り払い、清々しく、自分らしく生きている。自分の生きる道に気付けたなんて本当に羨ましいです。彼女は確かに、何者かになったのです。

 

眠れない夜に本棚で見つけて読んでみましたが、中々有意義な時間が過ごせました。“普通”という概念について考えさせられました。2時間あれば読めるので、是非オススメしたいです!何だか、これからコンビニを見る目も変わりそうです♪

 

コンビニ人間村田沙耶香の感想でした!

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『コンビニ人間』~あらすじ~私も〇〇人間になりたい!

私も〇〇人間になりたい!

コンビニ人間村田沙耶香

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村田沙耶香さんの、2016年の芥川賞受賞作『コンビニ人間』。“コンビニ”って、親しみがある響きなのに、どこか面白い響きでもありますよね。“コンビニ=底辺”なんて言う人も居たりするのに、コンビニが無いと皆困ってしまう。これは、36歳独身で、結婚はおろか恋愛歴も無し、社会経験はコンビニのアルバイトのみ、という女性がコンビニを通して生き方を模索していくお話です。

 

【あらすじ】~私の見解も含まれています~

大学卒業後も就職せず、18年間コンビニのアルバイトを続けている、“古倉 恵子”は、36歳となった現在でも未婚で、結婚はおろか恋愛をしたこともありませんでした。

 

恵子は幼い頃から変わった子でした。公園で亡くなっている小鳥を見つけた時、彼女が発した言葉は、“可哀相”でも、“悲しい”でもなく、“家に持って帰って食べよう。焼き鳥が好きなお父さんが喜ぶから。”でした。他にも、喧嘩している男の子達を止めようと、片方の男の子をスコップで殴って気絶させるなど、周りにとっては理解不能な言動や行動をするのでした。彼女にとっては、合理的な判断でやったことも、普通の人からすると倫理的観点からみて明らかにおかしいことだったのです。つまり、恵子は普通”の子ではありませんでした。他人の目(虐待されているのではないかという疑いなど)、親の心配(家の子はどうしたら正常になるの?)などから、彼女は、家の外では無口になり、物議を醸すような言動・行動をするのを抑えるようになりました。

 

誰にも理解されることなく、孤独だった恵子ですが、大学在学中にコンビニでアルバイトを始めたことで、そこで生まれて初めて、自分が世界の“部品になれているという実感を得ます。コンビニではマニュアル通りに、つまり目的のために合理的に動けばよいので、自分の意思が無い彼女にとってはとても居心地が良い場所でした。“普通であること”が分からない彼女にとっては、コンビニは複雑でない、シンプルな場所でした。コンビニの店員でいる限り、そこでは彼女は必要とされることが出来ていたのです。

 

恵子は、普通の30代女性で居るために、同僚のファッションや喋り方を真似します。会話においても、“理解出来ないことがあればとりあえず同調をする”というスタンスで居たので、浮く事なく馴染むことが出来ていました。でも、どれだけ工夫をしてみても、彼女らの“気持ち”や“感情”には共感する事ができませんでした。彼女らが、なぜ他人に怒りを覚えたり、悪口を言ったりするのか、恵子には理解出来ませんでした。恵子は、“普通”で居る為に努めていましたが、やはりなれては居ませんでした。

 

それでも、日々、コンビニで良いパフォーマンスをするために、食事をして栄養をとり、十分な睡眠をとることで体調管理を行い、コンビニ店員として清潔な印象を保つために身なりも整える、という、全てをコンビニにささげるという生活は、彼女にとっては非常に充実したものでした耳を澄ませば、コンビニの音(飲み物のドアを開ける音など)が聴こえ、いつでも彼女を満たしてくれるのでした

 

しかし、ある時、“白羽”という新人が入って来た(婚活目的で)ことで、そんな彼女の日常は一遍することになります。彼は、彼女に言います。“そんな生き方をしていて恥ずかしくないのか”と―――――。

 

続きは本編で!次回は感想です!

『君の膵臓を食べたい』~あらすじ①~今、愛について考えてみませんか?

今、愛について考えてみませんか?

『君の膵臓を食べたい』住野よる 

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映画化もして、大変話題になった小説ですね!映画の方は観ていないのですが、『泣けたー!』という友人の紹介で、小説の方は読んでみました。

 

一読して、皆さんに伝えたい事は一つ。

 

本気で恋愛しろ!!!!!!!!ごめんなさい。つい、勢いが過ぎました。

 

青い中高生にも、チャラっけのある大学生にも、お洒落でトレンディーなOLさんやサラリーマン達にも、既に愛を知っている人にも、色んな人に伝えたい。

 

“愛”について、今一度考えてみませんか?

 

【あらすじ】~私の見解も含みます~

この物語の主人公である、“僕”は、病院で、“共病文庫”という一冊の本を拾います。それは、同じクラスの女子、“山内桜良(やまうちさくら)”が書いている日記帳でした。共病文庫には、彼女が膵臓を患っていて、余命が幾何も無いことが書かれていました。彼女は共病文庫を、自分が死ぬまで自分以外の誰にも見せない、と決めていたのですが、“僕”に偶然読まれてしまい、“僕”とだけ、大病と日記の存在という秘密を共有することにします。(この小説の中で、主人公“僕”の名前は最後まで明かされていません。

 

山内桜良は極めて明朗な性格で、いわゆるクラスの人気者です。“僕”いわく、絶世の美少女というわけでは無いのですが、目鼻立ちがはっきりとした顔立ちをしている、“可愛い”部類に入る少女です。(作中で、“僕”は彼女のことを、クラスで三番目に可愛いと言っています。)愛想がよく、コミュニケーション能力が高く、よく笑い、悲しい出来事には涙を流したり、時には正義感を発揮する場面もあったり、喜怒哀楽や感情表現が豊かで皆から愛される人です。対して、“僕”は、一般的に言えば、地味で目立たない少年です。友達がおらず、そもそも他人への関心が薄いため、人には極力干渉しません。ちょっと理屈っぽいところがあり、考えなしな発言などを小馬鹿にする一面があります。感情表現も乏しく、心は閉鎖的で、友達も居ません。小説が趣味で、独自の世界を大切にしています。(悪い言い方をすれば、自分の世界に閉じこもっている、と言えます。)内に秘めている意思や、感情はしっかりしていますが、それを他人と共有することはなく、いつも“誰か”ではなく、自分の内面と向き合っている人です。二人は、“共病文庫”というきっかけが無ければ、会話を交わすことすら、ほぼ無い関係でした。

 

山内桜良は、共病文庫をきっかけに、“僕”に興味を持ち始めます。彼女にとって、“僕”は、“病気という真実を知りながらも、彼女と日常をやってくれる唯一の存在”でした。家族は、彼女の発言一つ一つに過剰反応して、日常を取り繕うのに必死になっているし、友達に教えたら同じくそうなってしまうだろう。逆に、医者は病気の現状という真実だけしか与えてくれない。真実を知りながらも、過剰に動揺したり、同情したり、悲しんだりすることなく彼女と接し、彼女と日常を過ごせる唯一の存在である“僕”は、一緒に居て気が楽で、興味を引く存在だったのだと思います(全く性格な正反対が面白かった、ということも理由の一つだったと思います)。

 

山内桜良は、“死ぬまでにやりたいことをやる”、という目的で、“僕”を焼肉へ誘い、買い物へ誘い、旅行へ誘い・・・。“僕”を、彼が今まで全く体験したことの無かった世界へと、いわば強引に引き込んでいきます。彼女の強引さ、奔放さ、闊達さ、ちょっと論理性に欠ける思考、たまの図々しい発言、ハツラツとした笑い声は、最初、“僕”にとっては鬱陶しいものでした。しかし、同じ時間を重ねていくに連れ、彼女の考えていることを無意識的に予想(妄想、に近いかな?)してしまったり、自分とは全く正反対な性格や行動に、徐々に尊敬のような感情を抱き始めるのです。

 

“僕”は、彼女のリュックの中をたまたま見てしまった時に見つけた大量の薬剤や、彼女自身の“死”に関する発言などから、“彼女は死が迫っている人間”なのだ、ということを度々実感させられます。しかし、あまりに彼女が明るくひょうきんで、ハツラツとしているため、現実と、目の前の彼女の姿の不釣り合いさに、“彼女は余命が幾何もないのだ”という認識が不安定になっていきます。(ごめんなさい、表現が不適切かも;;)

 

タイプが真逆、というか、度を超えて真逆な2人がどういう訳か、かなり親密にしているようだ、という噂は学校内に広まっていきます。(彼女に好意を抱いている人物から、“僕”は軽くいじめを受けたりもします。)山内咲良の親友、“恭子”も、得たいの知れない“僕”と、不可解な二人の関係性に不審感を抱き、ちょっぴり“僕”に敵意を向けてくるようになります。

 

続きます。

八戸市の海を一望できる!『カフェ&ギャラリーうみ音』さん

八戸市の海を一望できる!

 『カフェ&ギャラリーうみ音』さんのご紹介!

 知っている方は少ないかも知れませんが、国内有数の港街である “青森県八戸市” は海景色がとっても綺麗で有名な観光地なんです。『カフェ&ギャラリーうみ音』さんは、そんな青森県八戸市の海の傍にある “鮫駅”から、車で2,3分、歩いて15分程度のところにあります。

 

 オススメポイント①席から見下ろせる海の絶景!

オススメポイント②鮮やかでかわいいコーヒーカップ&ソーサー

 

 オススメポイント①:席から見下ろせる海の絶景!

うみ音(うみね)さんは、丘の上に位置しているので、席から見下ろせる雄大な海!絶景!が特に魅力的なカフェなんです。

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ね!素敵でしょ?平日の3時~くらいだとあんまり混んでいないので、ゆっくり読書する時もあるんですが、長時間居ると、曇ってきたり、晴れていてもにわか雨が降ったりと、天候が変わってくるんですね。その度、海の表情も変わってくるので、それも魅力的です。

 

 この日頼んだのは、フォンダンショコラセット(1000円)!フォンダンショコラに、ブレンドコーヒーやラテなど好きなドリンクをつけられます。セットドリンクは “コーヒーと紅茶のみ” なんていう風に限定されていないのが嬉しいですよね。

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 雄大な海を眺めながらコーヒーをすする、なんて滅多に出来ない体験です。

 

 オススメポイント②鮮やかでかわいいコーヒーカップ&ソーサー 

私、こちらがお気に入りである理由の一つに、コーヒーカップ&ソーサーがすごく可愛いっていうのがあるんです。どのカップも、カラフルで華やかです。ちなみに、この日お代わりした時のカップがこちら。

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かわいいですよね!うみ音さんでは、ドリンクを頼むと茶菓子がついてきます。これも嬉しいですよね。

 

 この日は、“うみ音オリジナル有機ブレンドコーヒー”を飲みました。濃さはちょうどよく、しつこく無く、さわやかな印象のブレンドです。

 

 お食事のメニューもいくつかあり、その中でこんなランチを頂くことも出来ます。

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かなか普通の定食屋さんでは食べられないお刺身や、やさしい味のお惣菜が綺麗な小鉢に。目にも美しいランチですよね。海景色をゆっくり眺めながら、コーヒーやお食事を頂く時間は、とっても贅沢なひとときです。

 

 店内は、ログハウス風とちょっぴり異国的な雰囲気をミックスしたようなインテリアです。とても落ち着いた色味のある空間です。奥には小さなギャラリーもありますよ。

 

 いつもとはちょっと違う、特別な気分を味わいたいときは、是非、『カフェ&ギャラリーうみ音』へ足を運んでみてください~

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『カフェ&ギャラリーうみ音』

住所:〒031-0841 青森県八戸市鮫町下盲久保25−117

電話番号:0178-33-0134

定休日:第2・4水曜日、木曜日

営業時間:11:00~17:00

『言ってはいけないー残酷すぎる真実ー』 〇〇な人は絶対読んじゃダメ!

〇〇な人は、絶対読んじゃダメ!

言ってはいけないー残酷すぎる真実ー橘 玲 

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昨年の夏頃だったでしょうか、大変話題になっていた本ですね。タイトルが印象的だったので、手に取って目次をざっと読み、『あぁ、この本は私には多分必要ないだろうな。』と直感で思った記憶があります。でも、刺激物を体に流し込みたい、みたいな、そういう欲求が出てきちゃって思わず買ってしまいした。

 

一言、あまりオススメしません。やっぱり私には、必要のない本でした。

 

オススメしない理由①:読んでも意味は無いから

オススメしない理由②:ただ刺激ばかり受けて終わるから

 

オススメしない理由①:読んでも意味は無いから

読んでも意味は無いです。なんでかって、新書をチェックし、気になって購入する人にとって、この本は即効性が皆無だからです。

 

この本では、遺伝、見た目、教育に関わる、すでにみんなが分かりきっていること(例外はあります)を、科学的根拠の下で説明しています。数値という目に見える明確な裏付けを用いて説明しているんです。(学者の研究結果を見る分には、割と『へ~』って感じで、ひまつぶしにはなりそうではあります。あとちょっとしたおしゃべりのネタにもなりそうです。)

 

例えば、“努力は遺伝に勝てない” ということ。簡単に説明すると、人間の知能レベルや運動能力は、遺伝による要素がほとんどである、つまり、努力したところで、個人個人の能力の限界は決まっている、ということです。医者の子供は医者になる、というようなことは明確なエビデンスがある、ということです。

 

特に日本社会は、“努力至上主義”ですよね。幼い頃から、努力することは美徳であるという思想を、大人たちに植え付けられます。ちなみに、私もその一人です。大学一年生頃までは、私も完全努力至上主義でした。でも私達は、様々な挫折を、大人になってからいきなり味わう訳ではありません。もっと幼い時、早い人なら幼稚園児の時既に、人間には優劣があるのだと薄々感づき始めます。

 

つまり、私達にとって、その真実は “既に重々わかりきっていること” なのです。ただ、社会が、勝手にそれを口にすることをタブーとしているだけなのです。当然、『自分はバカだから努力しても意味がない』、なんていう思考の人より、『天才には及ばなくとも、努力すればきっと報われるし、努力をした事実はきっと無駄にはならない』と考える人の方が、日本の道徳的美しさという点でみたら勝っているとは思います。

 

でも確かに、この本が言わんとすることのように、努力をすることは美徳だ、という概念を押し付ける、というのは結構残酷なことです。頑張ってもどうにもならない人はなりません。だって、正しい努力の仕方を、自分で見い出すことが出来ないのと、それが分かっても能力自体が追い付かないから。

 

努力することを押し付けることは、逆に差別だ、というような言い分も理解できます。努力して成果を出せる人間だけがそのメリットを得られる、という状況を作り出すから。成功のために努力する権利は皆にある、と平等を謳っているようで、努力至上主義(資本主義とも少し似ている)は知識社会の中では格差を生みます。頑張ってもどうにもならない人はならないのに、社会から努力することを求められるのです。努力することは美しいらしいのです。すべては遺伝で決まっているのに。

 

この本のミソは、社会に対する問題提起だと思います。

 “努力は遺伝に勝てない”

“美人はブスより得である(金額で表わすなら、生涯で3600万円も!)”

“教育や子育ては子供の成長にさほど関係しない”

“犯罪者は遺伝子レベルでの共通点がある”  

うつ病は遺伝する”

これらの、皆が薄々感じている(分かりきっている)、社会のタブーを直視し、その上で、社会をひっくり返してみなければならないんじゃないかっていうことなんじゃないかと思います。つまり、従来とは全く違ったアプローチをしていかなければならない、ということです。(ただ、“レイプは進化の過程でしょうがないことである”のような記述もあるため、全てが周知の事実ではないが)

 

しかし、納得し得る部分がありつつも、やっぱり無意味な問題提起だなって思いました。だって人間は、今のままで十分幸せだからです。というか、お金があっても無くても、頭が良くても悪くても、美人でもブスでも、幸せになる才能が人間にはあるからです。生ぬるい幸せを手に入れる才能は、誰にでもあるのです。少なくとも、ここ日本では、この世界の不条理に嘆きつつも、なぜ、そして如何に不条理か、ということを命を懸けて訴える人はほとんど居ないのです。不条理に耐えられなくなった人の中で、自殺する人も居ます。精神を患ってしまう人も居ます。でも、そういう悲劇はしばらく経つと、やがて日常の中に溶けていきます。

 

こんなに生ぬるく、平和な日本では、こんな問題提起は無意味です。この本を手にとった誰が、世界を本気で嘆くでしょうか。世界はある見方をすれば狂っていますが、現時点では未だ正常です。教育者や、政府が並べる綺麗ごとを信じ、若者がいつでも安心して過ごせる世の中です。(実際はゆっくり安寧は崩れていると思うんですがね。)そんな正常な世の中で、これらのタブーを元にアイディアを打ち出したところで、誰が賛同するのでしょう。ちょっと頭のおかしな人だと思われかねません。この本は、未だこの世界には無意味です。こんにち、おぎゃ~と生まれた赤ちゃんが、よぼよぼの老人になっても、まだ意味は成さないと思います。つまり、この本に即効性はありません。この本を読んだからと言って、特に感銘を受けることはありませんし、今後役立つわけではありません。そういう意味では、読んでも無意味です。

 

オススメしない理由②:ただ刺激ばかり受けて終わるから

この本を読み終えて、ほとんどの人が受け取ったものは、“刺激”くらいしかなかったと思います。『ほんとかどうか実際はわからないけれど、とりあえず刺激的だったなあ』ってだけだと思います。もしかすると、不愉快な内容に苛立った人も居るかもしれません。

 

この本のミソは、社会への問題提起だと前述しましたが、あくまでそれは私の見解です。残酷な真実を並べるだけ並べて、あとは読み手に放り投げてる感がとっても強いです。なので『なんか凄いこといっぱい書いてたわ』とか『ちょっと頭おかしいわ』とか『ちょっと笑っちゃうわ』みたいな感想になるんだと思います。現代社会で、口にすることがタブーとされていることを使って世界を変えていくことの必要性と、その使用方法まで書いてくれたら面白かったのになって思いました。一瞬馬鹿だろって思えるアイディアでも、画期的且つ論理的であれば絶対ウケると思います。

 

 

言ってはいけないー残酷すぎる真実ー橘 玲

の感想でした!好奇心だけで読みたくなっちゃった人は、絶対読んじゃダメ!後悔しますよ~!

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仙台の有名店!『Cafe Mozart Atelier(カフェモーツァルトアトリエ)』さん

仙台の有名店!

『Cafe Mozart Atelier(カフェモーツァルトアトリエ)』さんのご紹介!

 仙台在住のカフェ好きさんなら、知らない人は居ないでしょう!『Cafe Mozart Atelier(カフェモーツァルトアトリエ)』さん。

 

放送大学前の道路を挟んで向かい側、地下鉄青葉通り駅から徒歩600mほどに位置するこちら。地下に向けて階段を下り、入り口をくぐると、テラスの大きな窓から、明るい光がさしこむ爽やかな空間が広がります。ちょっと不思議な感覚です。

 

オススメポイント①:広瀬川が一望できるテラス!

オススメポイント②:オリジナリティのあるスイーツ

 

オススメポイント①:広瀬川が一望できるテラス!

これは夕暮れ時のテラスでの一枚!川のせせらぎと、鳥の声、ゆったり流れる時間。こちらは、ブレンドコーヒー モーツァルトブレンド とトーストのスイーツ(名前忘れちゃった;;すみません;;)

f:id:thebookchang:20170831163557j:plainモーツァルトブレンド”は、少し華やかな香りで、個性的な印象のブレンドでした。他にも、種類豊富なドリンクが味わえます。(豆の種類もね!)コーヒーカップは、一つ一つ違うヴィンテージなデザインで、食器にもこだわりがありそうです。

 

それにしてもこの空間、すごく気持ちがいいんです。居眠りしちゃいそうでした。混まない時間帯(平日の15時ごろ?とかかな?)ならゆっくり読書に没頭出来そうです。(もちろん中でもね!)

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オススメポイント②:オリジナリティのあるスイーツ  

私の一押しスイーツは、“パウンドケーキ”

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何だか写真が微妙で申し訳ないです……この写真だと伝わりづらいのですが、厚切りで、油分少なめの素朴な味が凄く私好みなんです。他にも、マスカルポーネチーズのロールケーキ” や、創業以来の定番 モーツァルトババロア” 、人気№1“チョコレートケーキ“ショコラ・デ・モーツァルト” など、食べて頂きたいオリジナルスイーツがあるので、是非!ちなみに、パスタやサンドイッチなどのメニューも充実していますよ。

 

テラスでない方、中の店内は、クラシックが流れ、アーティスティックなインテリアが特徴です。落ち着いた、少し暗めの優しい照明で、壁に絵画もちらほら飾られています。テーブルや椅子は、卓ごとに違うデザインのものが置かれています。お店のこだわりがとても感じられる空間です。

 

インテリア、メニュー共に、お店の方のこだわりが光る、『Cafe Mozart Atelier(カフェモーツァルトアトリエ)』さん、仙台に来た方は是非行ってみてくださいね!

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『Cafe Mozart Atelier(カフェモーツァルトアトリエ)』

住所: 宮城県仙台市青葉区米ケ袋1丁目1−13

電話番号:022-266-5333

定休日:年中無休

営業時間:11:00~20:00

ほっとひと息 東京上野駅目の前!~『COFFEEリーム』さん~

ほっとひと息 東京上野駅目の前! 

『COFFEEリーム』さんのご紹介!

当ブログでは、本の他に、オススメのカフェも紹介できれば~と『はじめまして』の記事で書きました。なのでさっそく、紹介したいと思います。

 

慣れない東京でお腹が空いてしまった私。見知らぬ土地を、とことん開拓してやろう!という気力も湧かないほど腹ペコでした。なので、上野駅の改札を出て、目の前にあったこちらにお邪魔しました。

 

お料理の写真しかないので、どどーん。クリームパスタとカフェオレです。優しい味で美味しく頂きました。

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 店内は、入口を見た感じより、割と広く感じる印象です。席数も多く、私的には少し解放感のある感じが良かったです。そのためか、お客さんが多くても、結構ゆっくり出来ました。オレンジ系の照明で、カフェと喫茶店の間のような、お洒落だけれど、ちょっぴりレトロで親しみのあるインテリアなので、落ち着いた雰囲気がある空間です。でも、勉強したり、どっぷり本を読める雰囲気ではなかったので、おしゃべりや軽い読書にはぴったりな場所だなって思います。

 

創業70年の老舗カフェで、自家製に拘った豊富なメニューが自慢のリームさん。今回は、食事だけだったけれど、実は、店内で毎日焼き上げる、12種類のホームメイドケーキが大人気なんだそうです。とっても美味しそうでした。食べたかった~~手作りのケーキ、大好きなんだよなあ~~~またいつか行った時には、コーヒーもゆっくり味わってみたいです。

 

上野に来たら是非立ち寄ってみてください。私も、また行きたいです~

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『COFFEEリーム』

住所:東京都台東区上野6-15-9 上野駅の目の前、徒歩一分の距離です!
定休日:年中無休
電話番号:03-3831-3996
営業時間:9:15〜21:30

『サラバ!』西加奈子 ~あらすじ⑤&感想~ 人生に揺れているあなたへ!

人生に揺れているあなたへ!

サラバ!西加奈子 上下巻

前回の続き、あらすじ⑤です。

現在クズになってしまった歩。

 

幼い頃は見た目が可愛く、聞き分けも良く、姉と違って“いい子”で、皆から愛されれていた歩。 高校生に至るまで、クラスでは人気者で、容姿端麗なため女に困ったこともありませんでした。大学に入ってからも、相変わらず綺麗な彼女が傍に居て、ライターという夢をみつけ、成功に向けて猛進していたはずでした。いつだって上手くやっていました。故に、プライドもありました。

 

姉は歩に言います。“あなたは今まで私と自分を比べてただ揺れていただけよ。幹を見つけなさい。”と。家族として愛している、と姉は歩に伝えます。しかし歩は怒ります。今まで散々迷惑をかけてきたお前がどの口で言うんだと。

 

仕事も、大事な人も、歩には何一つ無い。

 

歩が相変わらずクズライフを送っていたある日、姉から一通の手紙が届きます。この手紙が歩の運命を再び突き動かしていくのですが…

 

続きは、実際に読んで頂きたいです。この続きを読んで、読者が自然に受け取るもの、得られる何かを、私の言葉で少しも色あせさせたくないからです。ここからは、私個人の感想コーナーになるので、読んでも大丈夫だよ!という方だけお読み下さい。

 

【感想】

人生において信じる何かを、自分以外の誰にも決めさせるな。歩には、信じるもの=幹が無かったんですよね。姉はその点、ちょっと変な宗教だったり、不可解なアート活動だったり、信じられる何かを常に探し続けて、それらを信じようとしていました。幼い頃の乱暴さや奇行も、最初は異常な承認欲求によるものだったんだろうけれど、その欲求はいつしか別の方向を向き、何か強いものを求めていくようになったんだと思います。そういう意味で、姉の人生は、周囲に迷惑をかけまくりつつも、常に何かを必死に探し、もがき続けた人生だったんだろうと思います。他の誰でもなく、自分だけが信じ続けられればそれでいい何かを。

 

歩も、実はその何かを無意識には探していたんじゃないかなと思います。ヤコブであったり、須玖であったり、どうしようもなく惹かれるものがありました。自分を支えてくれる強い何かを求めて惹かれたんだと思います。でもそれは、自分の信じるものではない。ただ憧れて、吸い寄せられただけのように思います。

 

歩は、周りに溶け込むのがものすごく上手いです。与えられた世界で、自分を出し過ぎず、出さなすぎず(いや表向きにはほとんど出していないかも)、上手に世界を楽しむことが出来ていました。でも、いつだって周囲の評価を気にしていました。幼い頃は母の機嫌をとり、姉を刺激しないように努めました。転校先の学校では、嫌われないよう最大限の配慮をし、思慮深い発言と行動を常に心がけました。自分を表現するより先に、周りが求めるものを考え表現していたと思います。中学時代からやっていたサッカーもそれなりに上手でしたが、始めた動機が周りに合わせたいから、だったので、早々に自分はプロにはなれないと諦めました。色々な面で器用貧乏だった気がします。でもそれでも良かったんです。だって、容姿端麗だし、女にはモテるし、学校ではバカをやってそれなりに楽しいし、世界は歩に優しかったから。

 

歩がライターとして堕落していったのは、最初に感じた情熱だけで仕事をしていたからなのかな、と少し思います。初めに感じた情熱の先に、それを続ける上での自分の中の確固たる目的のようなものが無ければ、大成しないのかも知れません。頭皮が薄くなる、なんて、非常に滑稽な描写ですよね。でも、人間は外見への自信が少し足りなくなるだけで、たやすく活力を失う生き物です。変わりゆく外見に頼らず、内面に、変わらない幹を持てということでもあるのかな。恋愛においても、歩は自分の心に嘘をつき、本当に愛していることに気付かないフリをしたりします。誰もが認める女でなければ、自分のプライドが許さなかったのです。(歩の一ファンとして、プライドが~なんて書くと彼が凄く傲慢な人間にしか見えなくなるかも知れないのですが、そういう部分だけじゃなく、優しい面もちゃんとあります。笑)

 

“芯”とか“幹”って本当に必要なんだって、私自身も、社会に出たあたりから考え始めました。多分これは遅いです。なんで気付くのが遅かったかと言うと、自分は芯のある人間なんだと思い込んでいたからだと思います。芯って、やりたいことや夢がある、とかっていう単純なことではないと思うんです。例え、弁護士になりたいから、消防士になりたいから、だから芯がある、とは必ずしも結びつかないんだと思います。愛している人が居るから、その人のためならなんだって出来るから、だから自分には芯がある、というのも必ずしも=にはならない気がします。今の私には、まだ上手く説明できないんだけどね。

 

作品の賞賛したい点は沢山あるんだけれど、総じて。西加奈子さんありがとうございました、面白かったですよ~!

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『サラバ!』西加奈子 ~あらすじ④~ 人生に揺れているあなたへ!

人生に揺れているあなたへ!

サラバ!西加奈子 上下巻

前回の続き、あらすじ④です。

歩は、自分が書いたバイト先の商品の紹介文を、ある雑誌の編集者に認められ、雑誌に枠をあてがって貰います。それがきっかけで、就職はせずにフリーライターとしてやっていくことを決めます。文章を書くことの面白さに目覚め、情熱を持ちました。歩が初めて、情熱を持てたことでした。様々な業界人に会えるようになり、有名人にインタビューできるようになり、海外でも活躍するようになります。

 

この頃、付き合っていたのは、カメラマンをしている女性でした。彼女はやはり綺麗で、自慢できる彼女でした。

 

その頃姉も、離婚した父と上京していて東京で生活していました。姉は、かつて自分自身を捧げていた“サトラコウモンサマ”という宗教にある意味での失望をしてから、自分の信じられる何か探すために必死でした。姉は東京で、巻貝を被って路上に居座るという、不可思議なアート活動?を始めます。やがて、それはネットの世界で特に有名になり、信者のような者たちも現れます。

 

歩は不安と怒りを覚えます。自分の順風満帆な今の生活が、姉という汚点で穢されることを恐れました。いつだって、歩の人生には、姉の存在がつきまっていました。歩にとって姉は、恐怖であり、自分の人生を邪魔してくる脅威だったのだと思います。

 

姉のことで頭がいっぱいで、思い悩んでいた歩は、思い切って姉のことを彼女に話しますが、彼女から最終的に出てきた言葉はとても残酷でした。『お姉さんを撮らせてくれないか』。彼女は、自分のステップアップに姉を利用しようとしたのです。姉は神出鬼没でどこに現れるか分からず、巻貝から決して出ようとはしなかったので、世間からは未知の存在でした。そんな姉を撮ったとなれば、注目が集まるだろうと考えたのです。

のちに、これがきっかけで、世間にその姿を披露することとなった姉は、その外見故に、多くの誹謗中傷を受けることとなり、傷ついてネットの世界から姿を消し、海外で旅をすることになります。

 

やはり、歩にとって“女”は、理解からはほど遠い、信頼に値しない生き物でした。彼女とは別れました。

 

歩は、このことと、30代なのに頭皮が剥げてきたこと、その他いろいろな事がきっかけで徐々に堕落していきます。容姿という圧倒的な自信を無くした歩は、人とコミュニケーションをとることすら上手くできなくなっていました。気付けば、ライターの仕事は激減し、隣に居るのは、小太りで世話焼きだけど冴えない彼女でした。でも、実は愛して居ました。しかし、その彼女の生々しい浮気現場を、たまたま繋がってしまった電話で音声という形で直接知ってしまい、別れることになりました。苦しい、悲しいくせに、こんなやつ最初から好きではなかった、と自分の心に嘘をつきます

 

歩は、須玖と、そして大学時代に尻軽だと馬鹿にしていたけれど、本当は好いていた鴻上と偶然再会し、なりゆきで、三人で度々合うようになります。歩にとって、三人で過ごす時は、自分の過去の栄光に浸れる時間でした。しかし、須玖と鴻上の関係は歩の知らない間にかなり親密になっていたようで、ある日二人から交際宣言をされてしまいます。歩は、鴻上が昔ビッチだったという過去を須玖にばらしますが、須玖は既にそのことを理解していたのでした。二人の関係を壊すような卑しい発言をしてしまうほど、歩の心は醜く荒んでいたのです。

 

自分探しの旅へ出た姉は、世界各国を転々とし、その過程でなんと伴侶を見つけていました。あれだけおかしな言動・行動を繰り返し、あらゆる場所で一番のマイノリティで居ることに執着し、過剰な自己表現をして周囲を困らせ、悲しませ、混乱させていた姉が、嘘のように穏やかで、まともな人間になって居たのです。

 

歩は気づけば、“クズ”になっていたのでした。

 

続きます。 

『サラバ!』西加奈子 ~あらすじ③~ 人生に揺れているあなたへ!

人生に揺れているあなたへ!

サラバ!西加奈子 上下巻

前回の続き、あらすじ③です。

前回は、大学に入学して早々、歩が尻軽男に変貌したところまででした。私(ぶっくちゃんぐ)は、この辺まで読んで、つまり、大学生編の最初のあたりまで読んで、歩に恋をしていることに気付きました(吃驚)

 

歩の一歩下がって物事をみる視点、空気を読んで周りに溶け込む力、家族含め周りの誰をも不快にさせないような言動と行動それらは、自分を守る術であると同時に、歩の臆病さ、そして優しさを象徴していたような気がします。多分歩は優しいんだと思います。

 

そして、それが幼い頃から可能だったのは、やはり聡明であるからなのだと思うのです。人間への観察力や見解少々ひん曲がっているときもあるが)も優れているし、魅力的な人間を見抜くことに長けています。また、自分の尊敬できる人を、本当に素直に尊敬しています。歩には、そういう類の聡明さがあるのだと私は思います。

 

ヤリまくった大学時代を読んでも、その恋心は揺らぎませんでした(笑)揺らぐどころか、これまで、幼い頃から様々なことに葛藤する歩を見てきて、彼の人生にどっぷり浸かってしまっていたので、こういう場面も、彼の人生の一部として素直に入ってきました。なんだか、こんなことを書いていると気持ち悪いですね(苦笑)

 

これまで安定の一途を辿っていた歩の人生は、大学時代を機に、少しずつ変化していきます。ヤリまくった大学一年目を終えて、歩はあるサークルに夢中になります。音楽や、小説、映画など芸術を楽しむサークルです。須玖の影響で、自らも自然に芸術分野への造詣が深くなっていた歩だったので、ここが大学での居場所となりました。その影響でレコード屋でのアルバイトをするようになり、そこで出会った、一つ年上の女性と付き合います。彼女は綺麗で頭もよく、歩の自慢でした。歩が彼女として公に出来る人は、確かに魅力的でしたが、いつだって、誰かに自慢できるような女性でした。

 

これまで、歩が強く惹かれた人物(物語ではこういう表現はしていませんが)は、ほとんどが男だった、と前述しましたが、例外が一人居ました。それがサークル内で出会った“鴻上(こうがみ)”という女性です。彼女は、いわゆる尻軽女だったので、最初歩は毛嫌いしていましたが、彼女を深く知るほどその心の広さに惹かれます。鴻上は、歩が心を許せた、そして姉のことを打ち明けられた初めての“女”でした。しかし、彼女のことを好きだ、と認めることはできませんでした。自分には付き合っている人が居るから、という理由の他に、自分がこんな尻軽女を好きになるなんてありえない、と歩のプライドが許さなかったのです。

 

続きます。