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『コンビニ人間』~感想~私も〇〇人間になりたい!

私も〇〇人間になりたい!

コンビニ人間村田沙耶香

前回の続き、『コンビニ人間』の感想です!

 

【感想】~ネタバレありです~

“この人、アスペルガー症候群っぽいな” 読み始めて直ぐ、主人公の思考回路や行動を見て思ったのですが、最後まで読んでみてやっぱりそうなんだろうなぁと思いました。幼い頃に気づいて貰えていたら、また少し違った人生になっていたのかな、とも思いました。

 

主人公である、“古倉 恵子”は、この小説で言うところの“普通の人間”ではありません。小学生の頃は、男の子達の喧嘩を止めるためにスコップで殴って気絶させたり、ヒステリーを起こした先生を静かにさせるために、スカートをパンツごとおろして泣かせてしまったり。恵子は、それらの行動を咎められても、何故咎められるのか理解することが出来ません。本人的には、ただ、最も合理的な手段を用いただけなのです。

 

いつでも、誰にでも、家族にすら“異質”であると思われ、この世界に馴染むことが出来なかった彼女ですが、大学のときに始めたコンビニのアルバイトで、初めて自分の居場所を見つけます。そこでは普段、“大学生”であったり、“主婦”であったりと、どのような肩書があろうと、皆等しく“店員”であり、それ以上でもそれ以下でも無かったのです。時間帯ごとにやることは決まっているし、皆が一つの目標(新商品を宣伝する、特売のファーストフードを大量に作って売り上げる、など)に向かって等しく行動している。自分の身なりも、生活リズムも、全てコンビニのためだと思えば、彼女は迷いなく行動する事が出来て、活き活きと生活することが出来ましたコンビニで働いていれば、自分は世界とわずかでもつながることが出来て、コンビニという何かの塊を形成するものの一部、“部品”になることが出来たのです。多分、自分の存在価値を初めて見い出すことが出来たのでしょう。

 

そうして18年が過ぎ、彼女は37歳になっても、コンビニでアルバイトを続けて居ました。同僚の喋り方やファッションを真似て、“普通の30代女性”で居ることに努めていた恵子ですが、“普通の人間”は異質なものを本能で見分けることが出来るんですよね。いい歳をして、結婚していないアルバイト生活の彼女は、上手くやっているようで、実は“異端者”であると認識されていたのでした。

 

“この世界で異質なものは排除される”とか、“世界の仕組みは縄文時代と変わらない。狩りの出来る強い男が、村一番の美女を娶る。子供を産めない女や、ろくに狩りも出来ない男おはムラからはじき出される。” という、この小説に出てくる思想は本当にその通りだなと思います。私達は、自由な生き方を選択しているようで、いつも“普通”に縛られていますよね

 

“世の中での普通という概念に、私達は常に縛られている”

 

子供の頃は、皆が同じに見えますよね。(実際は、親の収入などの家庭環境も関係するので、皆が同じというのは少し違いますが)子供の頃に、激しく人を羨んだり、妬んだり、ということはそうそう無いかと思います。でも、大人になれば、社会的地位や生活水準の差というのは顕著に表れます。他人と自分を比べて、自分より上に見える人をリアルな感情で羨んだり(もしくは妬んだり)、自分より下に居る人を見てホッとしたりするようになります。

 

“普通”って凄く曖昧な概念なので、結局他人と自分を比べてマウンティングしてしまうんです。マウンティングすることでしか、自分が普通なのか、普通では無いのか判定することが出来ないんです。だってそうでしょ?一般家庭はこんなんです!普通の人間っていうのはこんな性格です!っていうはっきりとした指標は何処にも無いんだから。恵子も、“普通”が分からず、一般的な人とはちょっと違う意味で“普通”に縛られ、振り回されて居ますよね。

 

最終的に彼女は、普通で居たいからコンビニで働くのではなく、もう“本能的にコンビニが好きなのだ”と気づかされて、一生コンビニで働いていこうと決意をします。私には、自分の望む生き方を本能で選択したように見えました。彼女は“普通”に縛られず、ありままで生きることを選んだのだと思いました。

 

コンビニ人間』は、アスペルガー症候群の人の人生の話ではありません私達一人一人が共鳴出来る話なんです。私達は一人一人、普通じゃないし、それが普通なのだから。主人公、恵子がコンビニで一生働いていくことを決めたこと、自分を“コンビニ人間”である、と堂々と言えることは恥ずかしいことでしょうか?私には、どうも格好良く見え、羨ましく思えました。固定観念を取り払い、清々しく、自分らしく生きている。自分の生きる道に気付けたなんて本当に羨ましいです。彼女は確かに、何者かになったのです。

 

眠れない夜に本棚で見つけて読んでみましたが、中々有意義な時間が過ごせました。“普通”という概念について考えさせられました。2時間あれば読めるので、是非オススメしたいです!何だか、これからコンビニを見る目も変わりそうです♪

 

コンビニ人間村田沙耶香の感想でした!

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